93歳の漁師と20歳の娘が織りなす、不思議なひと夏の「道行き」―

鎌倉・長谷の海岸で地引網を営む93歳の老漁師・繁田。妻はすでに亡く、東京で教師を務めるひとり娘・智子は月に数回顔を見せる程度だが、網を曳く手はいまだ現役、悠々自適のひとり暮らしだ。しかし、わずかずつ進む老いと、漠然とした寂寥感が、繁田の日常を静かに包み込んでいた。

そんな夏の初め、網を曳く繁田の姿を写真に収め、気さくに話しをかけてきた少女の姿があった。少女は由希と名乗り、カメラマンをめざしていると語る。今は亡き祖父の面影を繁田に重ねたという由希は、それからも浜辺を訪れるようになり、70歳以上も年の離れた2人は、互いの心の欠落を埋めるかのように、次第に親しさを増していく。海を歩き、祭りを楽しみ、鎌倉の古寺をめぐる。かけがえのない2人だけの時間が流れていく。

だがある日、浜辺で「逢瀬」を楽しむ繁田と由希の前に智子が現れたことから、2人の関係は思いがけない方向に……。


  



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